「このままここに居てもしょうがないか・・・」
椅子の上に立ち上がると、目の前の大きな箱の向こうから僅かな光が入ってきているのが見えた。
ちょうど逆側にあるのが窓なので、おそらくあれがこの部屋の出口だろう。
窓から差し込む僅かな光を頼りに、あたしは僅かしかない運動能力を駆使し扉を目指した。
「け、結構キビシイ・・・」
目が慣れてきたおかげで暗闇は平気なんだけど、ここに置かれている物は全て古いって言うかボロイ!
だから椅子の背に足を掛けて箱によじ登ろうとしたら、ばきっと言う音を立てて椅子が壊れるし(体重の所為とは思いたくない・・・)手で叩く分には丈夫そうな音がする箱も、いざ乗ってみたらその下の箱が腐ってたらしくへこんでしまって登れなかった。
まぁそんなこんなで障害物を乗り越えて、ようやく扉の所へ到達した。
扉の前にもやたら物が置かれていたので、ちょっと横へ移動させてもらった。
「ようやく新鮮な空気が吸える〜」
ほこりでノドが痛くなっていたので、何はともあれ外へ出ようと目の前にある扉を軽く押したが開かない。
「ほぇ?」
もう一度片手で取っ手を持って押すが・・・やはり開かない。
「何でぇ!?」
何度押しても開かないので、今度は全体重をかけて扉を押してみようとした所で・・・いきなり扉が開いた。
全体重をかけていたので自然と扉の向こうにいる人に倒れこむ形になってしまった。
まぁ人がいなければ床に頭をぶつけるだけだろうけど・・・。
バフッと言う音と共にあたしは白衣の人物に向かって倒れこんだ。
「・・・おや?」
頭上から降る声に若干聞き覚えがあるが、一番見覚えのあるものがあたしの顔のすぐ横にある。
それは・・・可愛いウサギのぬいぐるみ・・・。
まさか もしや
「こんな所に可愛いウサギが一匹・・・」
「ニィ 健 一 !」
「ん?僕の事知ってるんだ・・・怪しいなぁ〜」
分かりたくなくても分かってしまった・・・。
ここはおそらく桃源郷にある吠登城!!
しーかーもー今あたしの目の前にいるのは、現代化学の最高峰・生命工学の第一人者とさえうたわれる天才・・・だけど胡散臭いマッドサイエンティスト!&謎のウサギ!!
この人に捕まったら・・・って言うか、このままじゃあたし一体どうなるの!?
「あれ?急に暴れだしてどうしたの?」
自分の身の危険を感じてるからに決まってるでしょ!
そんなあたしの気持ちなんかあっさり先読みして、ニィ博士はいつもと変わらぬ口調で(と言ってもあまりよく知らないんだけど)こう言った。
「・・・逃がさないよ。」
にっこり笑ってるその笑顔は何だかとっても裏があるようで・・・このまま気絶してしまえば楽だったのに・・・。
「いやぁ〜っっ!!」
「はいはい、大人しくしなさいね。」
暴れるあたしをまるで米俵のように肩に担ぐと、ニィ博士はスタスタと廊下を歩いて研究室らしき所へ入って行った。
「そういえば、君の名前は何かな?」
「です〜っ!お願い離して、帰して助けてぇ〜〜〜」
「ふ〜ん、かぁ・・・」
その後はもう 何にも覚えてません! って言うか思い出したくも無いくらい
あ〜んな実験やこーんな実験に付き合わされた。

END